フレイルとは(市報のだ4月15日号・5月15日号・6月15日号掲載)

ページ番号 1025695 更新日  令和5年10月16日


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市報のだ4月15日号・5月15日号・6月15日号掲載

フレイルとは

フレイルとは、健常な状態から要介護状態へ移行する中間の状態を指す言葉です。加齢に伴い筋力が衰え、疲れやすくなり、家に閉じこもりがちになる等、心身が老い衰えはじめた状態のことを言います。この状態は、65歳以上のおよそ1割の方が該当し、75歳以上でさらに大きく増えるとされています。フレイルは、体重減少、主観的疲労感、身体活動量の減少、身体能力(歩行速度)の減弱、筋力(握力)の低下の5つの基準により評価されますが、適切な対処をすることで、健常な状態に戻れる可能性があります。そのため、自分の状態を把握し、運動や食事の習慣を見直す等、フレイル予防を意識し、早めに対処することが重要です。

サルコペニア・フレイル・ロコモティブシンドロームの関係

フレイルという言葉を耳にするようになったと同時期に「サルコペニア」や「ロコモティブシンドローム」という言葉も聞くようになったのではないでしょうか。特にロコモティブシンドロームはコマーシャルなどでも聞き馴染みがあると思います。これらの言葉にはどのような違いがあるのでしょうか。

まず、サルコペニアは「高齢になるに伴い、筋肉の量が減少していく現象」と定義されます。ギリシャ語で筋肉を表す sarix と消失を表す penia を組み合わせた造語です。当初は筋量の減少のみに注目していましたが、現在では握力などの筋力低下や歩行速度が遅くなるなどの機能的な低下も含んでいます。

次にロコモティブシンドロームですが、通称「ロコモ」と呼ばれており、この言葉に聞き馴染みがあるのではないでしょうか。ロコモは運動器症候群とも呼ばれ、加齢に伴う筋力の低下や関節や脊椎の障がい、骨粗しょう症などにより、運動器の機能が衰えて、要介護や寝たきりになってしまい、そのリスクの高い状態を表す言葉です(日本整形外科学会の定義)。筋量の減少やバランス能力低下により、転倒し、骨折をしてしまい、寝たきり状態となることでさらに筋量が減少するという悪循環に陥ることが代表的な例であり、この悪循環は歩行や立ち上がりなどの移動能力をさらに低下させます。上述のサルコペニアは筋量の減少や筋機能低下を指す言葉ですので、サルコペニアはロコモの原因の一つであると言えます。

最後にフレイルについてですが、冒頭に述べたとおり、健常な状態から要介護状態へ移行する中間の状態で、加齢に伴う心身の機能の衰弱を意味します。私たちは日常生活において、身体能力を限界まで使って生活することは少なく、多くの余力を残して生活をしています。そのため、少し体調が悪かったり、小さなケガを負っていたりしても日常生活において大きな支障をきたさず、通常と同じように生活ができます。このような状態を「予備能がある」と表現します。
しかし、フレイルになってしまうと、この予備能が少ない状態となり、常に目一杯の力で生活をしなければならないと状況になります。そのためちょっとしたケガや病気に抵抗することが難しくなってしまいます。

フレイルの3要素

フレイルは運動器についてのみならず、心にも現れる症状を多方面からとらえる概念です。筋力低下などの身体的側面だけではなく、抑うつ状態などの精神や心理的側面、さらには孤立・孤独状態などの社会的側面も含まれます。この 3 つの側面をそれぞれ身体的フレイル、精神的フレイル、社会的フレイルと呼びます。身体的フレイルは運動機能の低下のみではなく、噛んで食べることや食べ物を飲み込むといった口腔機能が低下してしまうこと、食事のバランスが悪く低栄養状態になってしまうことなどの身体機能に関連する障がいを幅広くとらえています。これまでに説明したロコモティブシンドロームとサルコペニアの関係については、身体的フレイルの原因の1つにロコモティブシンドロームがあって、さらにロコモティブシンドロームの原因の1つがサルコペニアということになります。精神的フレイルは抑うつ状態や意欲の低下、認知能力の低下などに起因し、身体機能や社会性に影響を及ぼすものです。認知症の症状を発症していないことが前提となる、認知的フレイルもこの一部であると考えられ、こころの健康状態が身体的な虚弱に影響して、さまざまな生活行動に支障が出てしまっている状態を指します。
また、社会的フレイルは独居や閉じこもり、さらには経済的困窮など、身体活動量が制限されてしまうような社会的な問題を抱えている状態を指します。身体的フレイルと精神的フレイル、社会的フレイルはそれぞれ密接に関わっています。身体能力が低下してしまうと外出する機会が減少してしまいます。そのような状態になると心も塞ぎ込みがちになります。
また、外出の機会が減ってしまうと家族以外の他者や地域との交流も減ってしまいます。
一方で、精神状態が悪化してしまった場合も外出する意欲が減少してしまい、外部の人との関わりを持とうとする意欲も減り、社会的な孤立にも拍車がかかります。このようにどこか1つの要素が悪化してしまうとその他の要素も悪化し、ドミノ倒しのようにフレイルの症状は多要素的に進行してしまうことが問題です。

[画像]フレイルサイクル(43.2KB)

フレイルにならないために

ここまで記載したように、フレイルは身体的のみならず、精神的、社会的にも問題を抱えた状態になっていることを示す言葉であると理解していただけたかと思います。このフレイルにならないためにはどのようにすれば良いでしょうか。

効果的な対策として、日頃からの運動習慣が重要であると言えます。特に、屋外でのウオーキングやジョギング、簡単な筋力トレーニングはとても効果的です。ウオーキングやジョギングを行うことで心肺機能を維持増進することができ、運動コースに坂道や階段があれば運動負荷も上がり筋力トレーニングの効果もあります。
また、日中屋外で運動を行うことで太陽光を浴びることもできます。我々の体は太陽光を浴びると脳内でセロトニンという物質を生成することができます。セロトニンは不安やストレス状態を軽減し、精神の安定に重要であると言われており、欠乏してしまうとうつ病などにつながります。
また、セロトニンはリズミカルな運動を行うことでも生成されると言われており、ウオーキングやジョギングなど一定のペースで動く運動は特に効果的であると言えます。さらに、太陽光を浴びることで皮膚からビタミンDが生成されます。ビタミンDは骨や歯を維持するために重要な働きを担っており、転倒や骨折の予防、口腔機能の維持のためにも必須な栄養素です。ところが近年の報告によると日本人の約98パーセントがビタミンD不足であることが報告されています(Miyamoto et al., 2023、 The Journal of Nutrition, Vol, 153(4), pp1253-1264)。これらのことからも積極的に屋外で運動することは心身の健康に重要な役割を持ち、フレイル予防につながることがわかります。

さらに、若いうちから筋力トレーニングを行っておくことも重要です。筋肉は一度鍛えると機能が低下しにくくなるばかりではなく、再度鍛えなおした際に効果が回復しやすいという特徴があります。
つまり、筋肉を若いうちから鍛える「貯筋」をして筋量を確保しておくことで、筋肉が年々細くなってしまっても日常生活には支障が出ない量の筋肉を維持しやすくなります

まとめ

ここまでサルコペニア,ロコモティブシンドローム、フレイルの違いやフレイルの要素について説明をしました。フレイル状態に陥らないようにするために特別なことをする必要はありません。日々の生活の中で少し運動量を増やすだけで高齢になった時に心身の健康被害を食い止めることができます。特別にお金をかける必要もなく、今から始められる未来への健康投資を始めていきませんか。

[画像]室内で運動する女性(10.1KB)

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